装身具​

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装飾とは、存在を「証明」する手段でもあり、「隠す」手段でもある。

対局にあるもの同士の調和点を求めたい。

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調和を見いだすこととは、人間の仕事であると考える。​

 

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近くにあるように感じる画面の中。​見えない、目の前にある「もの」の背景。

一方向からの目に映る世界は、距離は、磨りガラス越しで見ているかのように危うい。

小さな頃に川辺で拾った、時を経て褪せたガラスのかけらが宝物だった幻のようで確かな記憶。

足元や手の中のありふれたものが、目を閉じて瞳をひっくり返してみると、宝物に変貌し現れたりする。

如何なるものにも、そんな魔法のレンズの焦点があるはずだと思うのだ。

私は、手の中の、どら焼きの中の餡子の中の、艶やかな「豆」を見つめた。

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[貴石 - 豆]

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豆：

古来より人類の生活において身近な存在である。

豆は薬であり、儀式でも用いられ崇拝の対象でもあった。

食することができ我々の血と肉となる。

乾燥状態のまま、生まれ持った艶と命のトリガーを保つ。

種であり果実であるその個体が持つ唯一無二である形・質感・色や模様。

後に実となり花となる未来が閉じ込められた美と可能性の結晶。

 

 

y vetにおいて豆は、宝石と同等以上の価値を持つものとする。

「新たな価値の角度」を示すための小さな装置。

精神を可視化させた「信じるものの形」としての装置/装身具であり、

理想を植え付ける「イマージュ」としての装置/装身具でもある。

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今、この世界は便利で保証されたものであふれている。

目まぐるしいスピードで進歩するテクノロジーは素晴らしく、

それらに頼らずには生きられない。

重視​されるスピードや丈夫さ。

そういった世界の中で、繊細で危うく儚いものを扱うことは避けられつつある。​

 

「限り」あることの価値を考える。−

失敗からの知見から感じ得る、強く記憶される脆さの美。

「ヒト」のように、不完全で限りあることで愛おしくてたまらなくなる感覚。

形ある限り、触れ方や感じ方を意識する。

星の死は新たな星の誕生の種となる。

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花自身は痛いかもしれないけれど

風で舞い散る花びらが蝶々のようで美しかったり

朽ちた花びらは土壌を豊かにするように​、

​少し視点を変えてみた時に現れる美の瞬間を捉え、

保証されたもので溢れる世界のなかに

儚さがエッセンスとなり浸透し、より瑞々しい世界を想い描く。

この無常の世界での毎日が記念日で特別な日でありたい。

という祈りを込めて過ごす日々の探検の中で見つけ出してきた美の記憶。

y vetにデザイン画はない。

豆と金属という素材を借りて、美の記憶の集合体に輪郭を与える。

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​y vet　菅沼　華佳